Special Interview - 4

日置茶の魅力を知ってもらうために。

日置市で生産されている「日置茶」の中でも、ひと際個性的なお茶を生み出している異色の二人がいます。「釜茶房まえづる」の前鶴賢士さんと「お茶のにいやま園」の専務・新山寛樹さんです。前鶴さんは、自社農園で茶葉を育て、自社工場で製茶して消費者へ直接販売しています。新山さんは、茶商として、生産者からお茶を仕入れ、ブレンドするなどして商品に仕上げ、消費者へ届けています。親戚同士の二人は、お茶の品質を追求する職人肌の前鶴さんと、お茶の魅力を伝えていくことが得意な新山さんという、それぞれの持ち味を生かして、オリジナルの商品作りを行っています。

昭和23年にできた前鶴さんの工場は、日置市伊集院の近代的な製茶工場の先駆け的な存在でした。現在も同じ場所で、高い製茶技術を持つ父の前鶴憲一さんと共に、県下で唯一の釜炒り茶専門工場を営み続けています。釜炒り茶は、茶葉を釜で炒って作ったお茶のこと。一般的には茶葉を蒸して作られるものが多数を占める中で、なかなか味わうことのできない希少なお茶です。新山さんは「釜炒り茶はあまり馴染みがないかもしれませんが、前鶴さんの『かまいり茶』を飲んでみると、実はとても香りが良く、さっぱりとしていて美味しいことに驚くと思います。しかし、一般的な緑茶とはお茶の色も違うし、味の特徴も違うので、評価されづらいというもどかしさがありました。茶商として、釜炒り茶の魅力をどうしたら伝えられるだろう、と考えてきました」と語ります。創業30年を超える「お茶のにいやま園」で商品開発も手掛ける新山さんは、同社が茶商として培ってきたお茶を見極める力と素材を活かす技を生かして、品質の高いお茶をより多くの人に楽しんでもらいたいと、知恵を絞っています。鹿児島のお茶に桜島小みかんや金ゴマなどのフレーバーをプラスしたオリジナル商品の「M’a Cha-ippe (まっ 茶いっぺ)」は、これまでのお茶のイメージをがらりと変え、注目を集めました。そんな新山さんの手腕を前鶴さんは高く評価しています。「いろいろなお茶の特徴を生かしながら、柔軟な発想で次々に面白い商品を創り出しているところがすごい。いつも勉強させてもらっています」と言います。

そんな二人によって新しい商品が誕生しました。前鶴さんが釜炒り茶を麹菌で後発酵させたお茶作りに挑戦していたところ、その味わいと希少性に注目した新山さんが、茶葉の色から“黒茶”と命名。桜島をデザインした鹿児島らしいパッケージに仕立てて「にいやま園の黒茶」というオリジナル商品に仕上げました。「黒茶」のインパクトをきっかけに、前鶴さんの「かまいり茶」のこと、ひいては日置茶全体の魅力を知ってもらえたら、と新山さんは意気込みを語ります。「にいやま園の黒茶」、そして前鶴さんの「かまいり茶 鳥印」をあらためて味わってみました。プーアル茶と同じ製法で作られた発酵茶である「黒茶」ですが、丁寧に発酵管理されているのでカビ臭はなく、独特のまろやかな甘みが豊かに広がります。「かまいり茶 鳥印」は、くるんと勾玉のように巻いた茶葉が愛らしく、丁寧に煎れると芳しい香りが立ち、あっさりとした旨味と甘味にやさしく包まれるよう。これまで知らなかったお茶の楽しみ方がここに広がっていました。品質の高さにこだわること、知ってもらう工夫と努力を怠らないこと。前鶴さんと新山さんの取り組みは、日置茶の魅力を発信していく大きな力になっていきそうです。

Interviewee 釜茶房まえづる 前鶴 賢士
お茶のにいやま園 新山 寛樹